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利用したHashiCorpの製品

Toyotaカスタマーストーリー

開発者体験とセキュリティ対策を両立すべくCCoE発足

標準クラウド基盤「TORO」を整備

モビリティカンパニーへの転換を目指すトヨタ自動車ではクラウド活用が広がるなか、HCP Terraformを社内標準クラウド基盤「TORO」のメインサービスとして採用。セキュアに利用でき、開発者体験の向上につながるクラウド共通基盤の構築を迅速化しています。

  • 1937年設立の自動車メーカー
  • カーボンニュートラル実現に向けて全方位戦略を展開
  • CCoE主導でクラウド共通プラットフォームTORO提供
  • クラウド環境構築の効率化とセキュリティの向上
  • クラウド環境の準備が2ヵ月から2日へ短縮
  • 管理リソース数16万。月間アプライ数800

Toyota

トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、代表取締役社長:佐藤恒治)は1937年設立、日本を代表する自動車製造企業。モビリティカンパニーへの変革に向け、カーボンニュートラルの実現と社会インフラとしてのクルマの新しい価値提供を目指している。世界でBEV(電気自動車)シフトが進むなか、 BEVだけでなく、HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)など、「マルチパスウェイ」で進めているのも特徴だ。また、AIや通信などデジタル技術を活用した取り組みを積極的に進めている。

「運用負荷を下げるためにマネージドサービスにしたかった。コミュニティ版から始めて後から移行するくらいなら、初手からサポートもつくHCP Terraformにしようと決断しました」

クラウドの課題に対応する専門チームを組成

日本の自動車産業をリードしているトヨタ自動車は、いまモビリティカンパニーへのフルモデルチェンジを成し遂げようとしています。クルマ作りを原点としながらも、デジタル技術の活用に積極的に取り組んでいます。

当然、クラウド活用は欠かせません。クラウド利用時のセキュリティガイドラインも策定し、クラウド活用は社内で拡大していきました。しかし、クラウド環境が利用可能になるまで2ヵ月程度かかることや、プロジェクトごとにセキュリティ設定にばらつきがあることが課題として浮上するようになりました。

そこで、クラウド活用推進や開発環境整備を担う組織としてCCoE(Cloud Center of Excellence)を発足させました。トヨタ自動車におけるCCoEの役割は主に4つ。開発者への安心・安全なクラウド環境の提供をはじめ、プロジェクト支援、クラウド活用人材の育成、仲間と互いに相談できるコミュニティ形成・運営にも尽力しています。

なかでも特徴的なのがクラウド活用のための独自プラットフォーム「TORO」(TOyota Reliable Observatory/Orchestration Platform)です。CCoEが発足した2022年4月から本格的に開発を開始しました。

「クラウド環境の準備作業や、どの環境でも必須となるセキュリティ設定は、開発者が注力すべきところではありません。開発者体験とセキュリティを両立すべく、仲間の課題を自ら解決しにいこうと、同じ課題感を持った社内のエキスパートとともに、CCoEを立ち上げました」(内藤孝昌氏)

申請すれば最短2時間でクラウド開発環境が整う

TOROは、AWSをベースに、IaCツールとしてTerraform、Terraformのワークフロー管理としてHCP Terraformを活用することに加え、ソースコード管理やオブザーバビリティツール、インシデント管理ツールなどを、開発・運用のための共通ツール群として組み合わせたプラットフォームです。

開発者が申請すると、必要なクラウドリソースの払い出しやツール設定がIaCで自動的に行われ、トヨタ自動車のセキュリティ基準に沿った標準的なクラウド環境が提供されます。「ムダな作業をなくし、開発者には正味作業に専念してもらいたいです」と樋口雄太氏は言います。

あらゆる環境構築作業が自動化されているため、最短で2時間、通常は2営業日以内にAWSアカウントが発行されて、開発に着手できる状態になります。このアカウント発行時点で、GuardDuty有効化やCSPM設定など基礎的なセキュリティが実施されています。なお、セキュリティは開発者に窮屈な思いをさせることなく、かつ安全性を確保できるようなガードレール型セキュリティにしてあります。また、CI/CD やオブザーバビリティなど、開発から運用まで幅広い範囲をカバーしているのが特徴です。

将来の規模拡大を見越してHCP Terraformを選定

CCoE設立当初、TOROの原型となるものがありましたが、IaCはまだ部分的でした。内藤氏は「このままの運用では厳しいだろう。手作業はできるだけ減らしたい」とHCP Terraformを選定(なお内藤氏は前職からTerraformを利用しており、今ではHashiCorp Ambassadorも務めています)。TOROではAWS以外のSaaSを複数採用しているため、クラウドベンダーが提供するIaCツールより使いやすいのも理由の一つです。

SaaS版となるHCP Terraformを採用した理由について、内藤氏は「今後AWSアカウントは1,000を超える規模が想定され、Terraformで重要なステートの管理、信頼性や安全性の確保、またTerraform自体の保守も考慮しなくてはなりません。CCoEは少人数なので、運用負荷を下げるためにマネージドサービスにしたかった。コミュニティ版から始めて後から移行するくらいなら、初手からサポートもつくHCP Terraformにしようと決断しました」と言います。

ビジネスの成果

TOROでHCP Terraformを採用して得られた成果:

  • クラウド環境を最短2時間、通常2営業日以内に提供できる
  • Terraform実行環境の管理が不要
  • HashiCorpからのサポートや最新機能を試すことができる

今後はさらなる自動化や品質向上へ

TORO運用開始直後は利用対象を新規プロジェクトに限定していましたが、2023年度からは既存プロジェクトの移行にも拡大したため、現在では数百のプロジェクトがTOROを活用しています。管理リソースは16万、月間アプライ数は800を超えるなど、日本ではトップレベルの運用規模となっています。

利用者を対象としたNPS(Net Promoter Score:顧客ロイヤルティの指標)では、半数以上が「他の人に薦めたい」と回答をしています。TOROが好意的に受け入れられており、当初から掲げてきた開発者体験向上に功を奏していることが分かります。

今後の展望について内藤氏は「クラウド環境を最短2時間で提供できるようにしたので、当初の目標は達成しました。これ以上スピードアップしてもあまり意味はありません。これからは、さらに規模やTOROの機能が拡大しても変わらずスケールし続けられるようにすることが大事です」と言います。

利用者が増加するにつれTOROの重要性も増してくるため、プラットフォームの品質向上やプロセス強化も必要性を帯びてきます。樋口氏は「現在ベータ版で提供されているTerraform Stacksは品質アップにつながりそうなので、GAになったら使い倒したいです。他にもさらなる自動化やセルフサービス化で、トヨタの開発をより加速させていきたいです」と言います。

最後に内藤氏は「これまでも細かい機能要望を出していますが、これからも大規模で高品質なインフラのライフサイクルを管理するための革新的な機能を増やしていただけるとうれしいです。プロダクト以外にも最先端の思想や文化を発信してもらいたいです。HashiCorpのようなテックカンパニーの考え方からいいところを採り入れていきたいと思っています」と期待を寄せました。

ソリューション:

トヨタ自動車のCCoEは、開発者に安心・安全なクラウド環境を短期間で提供するために、AWSをベースに開発と運用に必要なツールもセットにし、かつ社内のセキュリティガイドラインにも沿う「TORO」を独自に構築しました。クラウド環境設定の自動化にHCP Terraformを使用しています。今では日本で屈指のHCPリソース数を占めるほど活用を広げています。

Toyota Partners

  • 内藤孝昌氏 デジタル変革推進室 クラウドCoEグループ 主幹 トヨタ自動車株式会社

  • 樋口雄太氏 デジタル変革推進室 クラウドCoEグループ 主任 トヨタ自動車株式会社

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