利用したHashiCorpの製品
カスタマーストーリー
「膨大なサブシステム」と「数百のWebサイト」を少人数で運用できる"シンプルさ"が決め手
「膨大なサブシステム」と「数百のWebサイト」を少人数で運用できる"シンプルさ"が決め手
世界中で愛される数多くのIPを展開するスクウェア・エニックスのインフラチームでは、商用サービスを支える膨大なサブシステム群や数百におよぶ多種多様なWebサイト群を運用しています。長年の蓄積で複雑化していたなか、HashiCorp NomadとConsulの組み合わせで障害復旧の迅速化、脱属人化、運用工数削減を実現しました。
- 2008年設立
- ファイナルファンタジーシリーズ累計出荷・ダウンロード販売数2億900万本以上(2025年12月末時点)
- ドラゴンクエストシリーズ累計出荷・ダウンロード販売数9,700万本以上(2025年12月末時点)
- NomadとConsulで再現性や・運用効率向上
- サブシステム群では自動復旧で可用性・信頼性向上
- Webサイト群ではフロントエンド連携自動化で生産性・俊敏性向上
株式会社スクウェア・エニックス(本社:東京都新宿区、代表取締役社長 桐生隆司)はゲームを中心としたデジタルエンタテインメント事業を展開する企業。世界的IPの開発・運営に加え、ゲーム関連書籍やコミックの出版、デジタルコミック配信、グッズ制作・販売など幅広い領域でコンテンツビジネスを展開している。
無数のシステムが混在する巨大インフラ 運用を阻む複雑化と属人化の壁
スクウェア・エニックスは、日本のロールプレイングゲーム(RPG)を代表する「ファイナルファンタジー」「ドラゴンクエスト」の両シリーズをはじめ、人気コミック作品「鋼の錬金術師」「ソウルイーター」など、世界中から愛される数多くのIPを展開しています。壮大な世界観のなか、冒険や仲間との出会いを通じてキャラクターが成長していく──同社に共通する物語性の強さは、長年にわたり幅広いファンを魅了し続けてきました。同社のパーパスは「無限の想像力で、新しい世界を創り出そう。」。創り出したコンテンツが顧客の心に届き、日常に新しい世界が生まれ、やがて思い出となり、より豊かな人生を送ることにつながるようにとの想いが込められています。
同社 情報システム部では、社内向けシステムだけではなく、社外向けシステムのインフラも担当。そのなかには商用サービスや開発を支えるサブシステム群や、企業サイトやプロダクトに関連したWebサイト群があります。どちらも目的、要件、構成が異なる小規模なシステムの複雑な集合体です。
ユースケース1:長年積み重なった小規模サービスをNomadとConsulで可用性アップ
商用サービスを支えるサブシステムは、長年の運用のなかで細々としたものが増え続けてきました。DNSなら開発用、QA用、本番用、他にもメールやログ管理など多岐にわたります。関係者しかアクセスしないため小規模・低負荷であるものの、開発プロジェクト毎に準備する必要があるためシステム数が非常に多く、止まれば開発作業に影響が出るため冗長構成は欠かせません。稼働環境はオンプレミスで、当初は物理サーバー、後に仮想化へ移行するなど改善を続けてきましたが、2024年ごろからはOS資源の競合を解決すべくコンテナ化に着手。しかし依然としてコンテナの配置や構成管理で運用負荷が高く、設定の再現性が低かったため、コンテナ管理ツールの導入を検討することにしました。
同社のツール要件は「少人数で運用管理できるシンプルなもの」。複数ノードへ自動的にコンテナを分散配置して可用性を確保できること、コンテナ起動の設定ファイルを宣言的にするなど属人化を排除できること、コンテナホスト障害時にはサービスを自動復旧できることなどです。一方、オートスケーリングや負荷の動的リバランス、きめ細かな権限管理は不要としました。
スクウェア・エニックスの島田太郎氏は「チームの規模や管理対象を考えると、Kubernetesの多機能さは必要ありませんでした。それよりも学習コストが低く、少人数でも確実に運用を回せるシンプルさが私たちには合っていました。バイナリ1つ置けば動く軽快さは、オンプレミス環境を維持しつつモダナイズを進めたい私たちには大きな魅力でした」と言います。
比較検討の結果、要件をすべて満たしたのがHashiCorp Nomad(以下、Nomad)とHashiCorp Consul(以下、Consul)でした。導入時にはリファレンスアーキテクチャに準拠して、Nomadサーバー3台、Nomadクライアント3台以上、Consulサーバー3台で構成。島田氏は導入後の効果として「Nomadを導入してからは、物理故障が起きても、人間が気づく前にNomadが別ホストでコンテナを立ち上げてくれます。かつて(物理サーバー運用時)4時間かかっていた復旧が、今ではわずか数分。何よりも夜間や休日に連絡を待つ不安から解放された精神的な安心感が大きいです」と語ります。
ユースケース2:Webサイト群のNginxとApacheの連携をテンプレートで自動化
同社が運用するWebサイト群は、企業サイトからゲームタイトルの公式サイト、イベント・キャンペーンページ、更新管理ツールまで多岐にわたり、総数は数百にのぼります。静的なサイトもあれば、投票機能やフレームワークを用いた動的サイトもあります。サイトごとの差異をインフラエンジニアが個別に吸収していたため負担がかかり、また構成が異なるためデプロイ方法や設定管理が統一されていないことも運用上の課題となっていました。
スクウェア・エニックスの片柳勇人氏は「Webサイトは数が多く、要件もバラバラです。NginxとApacheを組み合わせた従来の構成を維持しつつ、どう標準化するかが大きなテーマでした」と振り返ります。そこでNomad のTemplate機能とConsulを組み合わせて、フロントエンドとの連携を自動化しました。NomadとConsulの基本構成はサブシステム群と同様、リファレンスアーキテクチャに準じています。これに加えて、ConsulがバックエンドのApacheコンテナを自動検知すると、NomadのTemplate機能がNginxの設定ファイルを自動生成し、コンテナの起動や停止に応じてリアルタイムに自動更新します。
またNomad CLI と CI/CD を組み合わせることで、Webサイトの追加や更新をパイプラインから自動的に展開できるフローも整備。重要なサービスではCanaryデプロイも実施しています。さらにサイト運用で必要な定期バッチ処理(Cron)もNomadのスケジュールジョブに移行しました。
なお新構成への実装にかかった工数割合で見ると、NomadとConsulの設計や構築は全体の15%程度。片柳氏は「Nomad自体に手がかからなかったため、本来やりたかったコンテナの移植作業とCI/CD整備に注力できました。導入後はWeb UIで稼働状況を把握できるようになったため、目指していた“サーバーへログインしない運用”が実現できています」と言います。
HashiCorp Nomad、HashiCorp Consulを採用して得られた成果:
障害時の自動復旧が実現、復旧時間も大幅短縮
運用管理の標準化と脱属人化
Webサイト群のフロントエンド連携を自動化
NomadとConsul の構築工数が少なく、コンテナ移植作業に集中
Web UI による可視化で、運用状況を俯瞰しやすく
既存のオンプレミス資産を活かしながら低コストでモダナイズを実現
小規模から始められる「Nomad」をコンテナ化のファーストステップに
2つのユースケースはどちらもNomadとConsulを採用することで運用効率を向上させています。特に、サブシステム群では障害時の自動復旧で可用性や信頼性、Webサイト群ではフロントエンド連携の自動化により生産性や俊敏性が改善されたといいます。今後はこのNomad基盤を、オンプレミスのみならずAWSやGoogle Cloudといったクラウド環境への展開にも活用していく方針です。
片柳氏は「NomadはKubernetesの下位互換ではなく、思想が異なるオーケストレーターです。Kubernetes未満、Docker Compose以上の領域にフィットするのが本質であり、適材適所で選ぶのが大事です」と強調します。
島田氏は「Nomadは、コンテナ化の“ファーストステップ”として非常に適したツールだと思います。コンテナを直接コマンドで立ち上げているような段階から、一歩進んでオーケストレーションを取り入れてみたいというチームにとって、導入コストも学習コストも低いNomadは有力な選択肢になります。小規模から始めて、少人数で確実に運用を回していきたい現場には、特にお勧めしたいですね」と締めくくります。
ソリューション
スクウェア・エニックスは、小規模・多品種のシステムを少人数で安定運用するため、軽量で扱いやすいNomadとConsulを採用しました。商用サービスを支えるサブシステム群では障害が起きても自動復旧できて可用性や信頼性向上させ、Webサイト群ではフロントサイド連携を自動化できて設定管理の標準化や脱属人化を実現しています。
担当者

島田 太郎 氏 オンラインサービス・インフラストラクチャー テクニカル・スペシャリスト 株式会社スクウェア・エニックス 情報システム部

片柳 勇人 氏 オンラインサービス・インフラストラクチャー リードエンジニア 株式会社スクウェア・エニックス 情報システム部
